「プレミアムフライデー」「テレワーク」「女性の社会進出」「フレックスタイム制」
日本政府が2016年に「働き方改革」打ち出すなど、昨今「日本社会の働き方」が大きくクローズアップされ、注目されています。
これまでの”典型的”な日本の働き方である「長時間労働」「終身雇用」「年功序列」といった規範が変わりつつある現代で、日本の働き方と海外の働き方にはどのような”違い”があるのでしょうか?
アメリカ、ドイツ、タイと各地域ごとに分類し、その違いを労働時間、環境、働くことに対しての価値観といった観点から考察していきます。
アメリカ
・定時になったらすぐ帰る
・決められた仕事のみをやるだけで広範な仕事をしない
・完全実力競争社会
など、アメリカの働き方と聞かれればこのように想像する人が多いのではないでしょうか?
この違いの根本にあるのが、「企業で働くシステム」の違いです。
アメリカの企業は株主・投資家寄りの施策ですが、日本企業はクライアント志向。
つまり、アメリカは企業へ資金を出資する「株主(オーナー)側」目線の経営に対し、
日本は、サービスを提供する「お客様側」目線での企業経営ということになります。
よく日本では「お客様は神様」と言われいますが、まさに「お客様目線の経営」を体現した言葉ですね。
この対象の違いが働くことの意義、働き方、継続性に影響しているため、労働時間や仕事の範囲の違いを生んでいます。
「定時になったらすぐに帰る」というイメージを持つアメリカの働き方ですが、先進国の中では労働時間が長いと言われ、2017年に行われたOECD(経済協力開発機構)の調査では、アメリカの労働時間は1日7.5時間。日本が1日7.1時間と意外にもアメリカの労働時間のほうが多いという結果になっています。
参照:「Average annual hours actually worked」
アメリカの企業はこの労働時間に対しどのような対策をとっているのでしょうか?
その対策の1つとして「オフィス環境」が挙げられます。
アメリカの労働(オフィス)環境
GoogleやMicrosoftのような大手から、スタートアップ企業まで共通して充実しているのが、会社内の「オフィス環境」です。
アメリカの企業では、従業員に「ランチ」や「スナック」を無料提供することが珍しくありません。
また、コーヒーカウンターやバー、卓球台といったコーナーを設けたり、ヨガクラスやマニキュアサービス、マッサージなど、「会社へ行くのが楽しみ」と思えるオフィスづくりに力を入れている企業が数多くあります。
他にも、オフィスでのパワーナップ(昼寝)を推奨するなど、労働の苦痛を軽減させるための様々な工夫も。
また、子供や家族が病気の日などは、急遽在宅勤務できるよう融通を利かせたり、学校は休みだけれど出勤の日は、子供や乳児同伴での出勤を許可するなど、柔軟な姿勢を見せる職場も少なくありません。
そして、週の何日かを在宅勤務として許可する企業もあるなど、「オフィス環境」で日本と大きく違いがあることが分かります。
ドイツ
日本人とドイツ人の国民性は似ていると言われ、特に「勤勉さ」という面では両国民の似た国民性として知っている方も多いのではないでしょうか?
しかし、前述の労働時間の指標では日本が1日7.1時間であるのに対し、ドイツは5.6時間と大きく違いがあることが分かります。
ではこの「勤勉さ」にどのような違いがあるのでしょうか?
まず、日本とドイツでは働き方に対する考えがまったく違います。
日本の労働は、「和」を重視したもの。変わりつつあるものの、日本の企業では年功序列を代表とする「上下関係」があり、組織単位の結びつきが強い傾向があります。一方、ドイツで重視されるのは「個」。会社は組織ですが、会社に頼ることなく個人のスキルで生きていこうと考えている人が多いのです。
ここが違う!量と質からみる「勤勉性」
日本では、仕事の量が重視されます。
従来から長時間労働がよいとされてきた影響があるからか、今でも平日は朝から夜遅くまで会社で過ごすという人は少なくありません。
一方、ドイツでは仕事の質が最も大事なもの。仕事の量=質ではなく、むしろ「やることをしっかりやっていれば、周りは何も言わない」のです。
契約時間分はしっかり働き、自分のやるべきことをしっかりやっていればよい。仕事がしっかり行われていれば、上司は何も言いません。むしろ、朝早くから夜遅くまで会社に居続ける人のほうが仕事ができない人と見なされます。
このように、ドイツ人の勤勉性は、日本と違い仕事の「量」ではなく、仕事の「質」にもとづいて生まれたもの。
だから、ドイツと日本を比較してドイツ人は労働時間が短くても、短い時間の中でより質を重視し熱心に働いているため「勤勉」と言われるのです。
企業研修はなし?徹底した”ドイツ流”現場実力主義
日本では、新卒で会社に入社するとまず最初に行われるのが企業研修。
1日から長い会社だと6カ月、1年までと期間は様々です。インターンの経験がなくても、この企業研修でみっちりと基礎を教えてもらえます。
一方、ドイツにはこういった手厚い企業研修はありません。新卒でも企業に入社したら即戦力として勤務を始めなければなりません。
それでは、どのようにして仕事の基礎を学ぶのでしょうか。
それは、学生中に行うインターンです。
ドイツではインターンが盛んで、どの企業も学生向けにインターン制度を取り入れています。このように、学生はまずインターンで職務経験を積み、一方的に仕事のやり方を教えてもらうというよりは、仕事をやりながら覚えるというOJT(On the Job Training)方式となります。
インターン中は、一般社員と同じ仕事を行います。他の社員も、インターン生を同等に扱いますし、本人も「インターンだから」という気持ちで仕事はしません。ミーティング中にはしっかり発言するし、意見があればそれを上司に提案したりもします。このようにして、学生はインターン中に仕事の基礎を学ぶのです。
以上から、ドイツと日本では”研修”環境の違いもみられます。
タイ
近年日系企業の進出が著しく増加している東南アジア。
その中でもタイは東南アジア地域で最も発展した国として知られており、そんなタイでは労働時間、環境、仕事観を含むHWP指標が多くのタイ企業で導入されています。
WHPとは?
職場での従業員の健康促進やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上を目的として始まったHWP(Happy Workplace Program)。
HはもともとHealthyを意味していましたが、「幸福感」が心身の健康に大きな影響を与えるとして、Happyを使うようになったようです。
1. Happy Body(心身ともに健康な体をつくる)
2. Happy Relax(リラックスする時間をもつ)
3. Happy Heart(親切心と思いやりをもつ)
4. Happy Soul(道徳心と信頼を培う)
5. Happy Brain(生涯学習を促進する)
6. Happy Money(適切なお金の管理方法を学ぶ)
7. Happy Family(社員の家族にとっても幸せな環境をつくる)
8. Happy Society(充実した社会の実現および周りの人をいたわる)
上記8つを基に、環境では1.2の項目が当てはまります。カラオケ、瞑想、マッサージルームなどの施設に加え、社員食堂で提供する食事が無農薬野菜などの安心安全な食材を使うなど、従業員の食事にも気を配ったオフィス環境が整っています。
タイは日本に比べ、より勤務中の”自由度”が高いです。何かを食べながら、スマホを見ながら、プライベート電話をしながらなど、「ながら仕事」をする人が多く、それが許容されている仕事観がタイ社会にはあります。
また、日本のように8時〜17時までと労働時間が決まっているわけでなく、自分の仕事が終われば帰るといった時間の自由さも。
このように、同じアジアでも日本とタイで大きく労働環境、時間、価値観が異なることが分かります。この違いはタイ人ならではの国民性であるマンペンライ(大丈夫)精神からきているのかもしれません。
まとめ
日本とアメリカ、ドイツ、タイと異なる地域の国々を比較すると労働時間、環境、働くことに対しての価値観が大きく違うことが分かります。
どの国が良くて、どの国が悪いとかではなく、より自分自身に合った働き方はどのようなものなのか。
海外就職を視野にいれている人だけでなく、これから就活や新社会人を控える学生も今一度”働き方”について考えてみてはいかがでしょうか?