はじめに
採用活動における最初の関門であるエントリーシート(以下、ES)。就職活動を始めるのであれば、進路が決まるまで幾度となく耳にも、口にもする言葉の一つです。
自己分析や業界分析、企業分析を経て、興味を持った企業の選考に合格していくには、まずはこのESを“しっかりと”書き、採用担当の興味を惹き、選考に通過しなければいけません。
ESを書く時のポイントについては、「入門編」として「PREP法」を紹介した記事を作っているので、そちらをまずはご確認ください。
この記事では、選考に落ちてしまった就活生のESを基に、よく聞かれる質問に対しての文章を、さらに細かいPOINTの視点で「どのように書けばよかったのか?」ということを説明していきたいと思います。
よくある質問「自己PR」
指定された文字数内で自分のことをアピールする「自己PR」。自分の“人となり”をわかりやすく、伝わりやすく、魅力的に表現することはとても難しいことです。
しかし、難しいからといって避けては通れぬ道なので、POINTを抑え、自分のことを最大限アピールすることができるように書き上げましょう。
事例1:ラクロス部の学生の場合(400文字)
【添削前】
私の強みは多様な価値観を持つ人と信頼関係を築くことができることだ。私は100人程度いるラクロス部に所属しているが、一軍、二軍と分かれており、部員全員が試合に出れる※①訳ではなく、いかにみんなのモチベーションを保つかが課題だった。そこで、両チームを経験している私が※②架け橋となることでチームの士気を高めたいと思った。※③まず、二軍の試合を見て、良い点、悪い点、改善点を伝えた。更に、自分が一軍で活躍することで皆の希望となり鼓舞した。その結果、二軍では、今まで点数に絡めなかった人が活躍し、一軍に昇格する者も出てきた。一軍では、出来ないことをチームみんなでどうすれば良いかを話し合い、一つずつ解決していった。多くの人から私に刺激されたと言われ、信頼を得た。積極的に会話をし、自身の技術向上によって、部員のモチベーションを上げ、何でも言い合える良い人間関係と信頼関係を築いた。(378文字)
POINT(全体):「主張(アピール)」と「根拠(エピソード)」は必ず結び付けること!
「主張(アピール)」である「多様な価値観を持つ人と信頼関係を築くこと」を最初に書けてはいますが、その主張とあとに続く「根拠(エピソード)」が結びついていません。
具体的に言うと、「多様な価値観」と書いてあるのに、その後の文章で「多様さ」が出てきていません。「多様」というくらいであれば、1軍2軍のみならず、他大学や他部活など多くの種類に所属している人とのエピソードが欲しいところです。
という意味では、「信頼関係を築くこと」のエピソードは書けているので、「主張(アピール)」もその点だけに絞ったものにしても良いでしょう。
POINT(全体):自分のアピールだけでなく、「企業でどのように活きるのか?」ということも書く。
自己PRは確かに自分をアピールする場ではありますが、それだけで終わってはいけません。それだけだと、ただの自慢話で終わってしまうからです。
採用活動はあくまで「企業の戦力になるのか?」という視点で判断されます。全体のESの構成にもよりますが(別質問で「どのように活きるのか?」を聞いてくる企業もある)、必ず「企業でどのように活きるのか?」ということを述べて文章を締めくくりましょう。
「信頼関係を築くことができる」から、志望している企業のどのような仕事に活かせるのか?例えば、社内の大人数がチームとして動くことが多い企業であれば、「チーム内の信頼関係を創り上げ、チームワークを上げることに寄与できる」のようなことを書けるとよいかもしれません。
企業によって求めている人材は異なります。自分の強みはどのような企業に向いているのかを見極めたうえで、自己PRの内容も考えるようにしましょう。
POINT①:「ら」抜き言葉に気を付けること。
言葉というのは時代が進むにつれて変化していくもので、「ら」抜き言葉はまさにその一例です。「出れる」ではなく「出られる」が正しい言葉遣いになります。
日常会話としては既に半数以上が使用しているという調査もあるようなのですが、ESにおいてはなるべく使わない方が賢明でしょう。
「~して(い)ます」のように、「い」を抜いてしまうこともあるので要注意です。
POINT②:読む相手のことを考えること。
ESを読む相手は、初めてあなたの文章を読みます。当たり前ですが、あなたのことは全く知りません。自分の中では当たり前になっている表現でも、初めての人には伝わらない表現かもしれません。
「両チームを経験している私が~」は書いている側や同じ部活の部員であれば伝わりやすいかと思いますが、企業にとってはいきなり登場してきた表現になるので、別の表現に変えましょう。もしくは、この表現の前にしっかりと説明しておくことでも良いかと思います。
前)「~みんなのモチベーションを保つかが課題だった。そこで、両チームを経験している私が架け橋となることでチームの士気を高めたいと思った。」
後)「~みんなのモチベーションを保つかが課題だった。チームとしての団結を高めるために、1軍も2軍も経験した私だからこそできることはないかを考えた。~」
POINT③:「理由」も必ず書くこと。
今更ですが、全国には就活生が山ほどいます。山ほどいる中で、似たような体験をし、似たようなESを書こうとする学生は必ずいます。
ではどうやって差別化すればいいのか?それは、「理由」をしっかり書くことです。この「理由」の部分に書く人の“人となり”が現れて、企業側はそこで判断をするのです。
なぜ、「架け橋となってチームの士気を高めたい」と思ったのか。なぜ、そのために「二軍の選手には良い点、悪い点、改善点を伝えよう」と思ったのか。
今回のESではこれらの部分が他学生と差別化できるポイントになるでしょう。これらのことについて順序良く(論理的に)書き上げることを意識すべきだと思います。
事例2:テニス部の学生の場合(300文字)
【添削前】
私は諦めずに努力し続けられる粘り強さに自信があります。所属する体育会テニス部の活動において私は1年生の頃からレギュラーに選んでいただきましたが、団体戦・個人戦両方で良い結果を得られずスランプに陥りました※①。何とか強くなって見返したいと※②他のどの部員よりも努力した自信があります。一つ良い結果が出たのは3年生の6月なのですが、そこに至るまでの2年弱努力し続けました。※①小さな目標設定を行うことや量と質の向上を図るために個人トレーナー・栄養士をつけたことや、アメリカへの単身テニス留学をしたこと※③、など多くのことに挑戦しました。結果が出ずに苦しい時期を乗り越えたからこそ諦めない粘り強さが培われました。(295字)
POINT(全体):自分のアピールだけでなく、「企業でどのように活きるのか?」ということも書く。
事例1と同様です。必ず結論として「どのように活きるのか?」ということは書きましょう。
「粘り強さ」がどのように活きるのか。例えば営業職がメインの企業であれば、「営業成績を上げるために粘り強く働ける」ことや「新規得意先を獲得するために地道な努力を続けられる」といったようにつなげる文章がよいでしょう。
企画職であれば、「全ての人にWin-Winとなる企画を細部まで粘り強く考える」などとつなげても良いかもしれません。
志望する業界、企業によって「どのように活きるのか?」ということはしっかりと考えましょう。
POINT①:回りくどい表現は控える。
ESというのは必ず文字数やスペースなどの制限があります。限られた条件の中で、より自分をアピールするためにも、回りくどい表現はやめ、シンプルに伝えるようにしましょう。
「レギュラーに選んでいただいた」や「団体戦・個人戦」を省き、「所属していたテニス部では1年生から試合に出ることができたが、スランプに陥ってしまった」ということだけを伝えられるようにしましょう。
「一つ良い結果が出たのは3年生の6月なのですが、そこに至るまでの2年弱努力し続けました。」の文章も、一番伝えたい「2年弱努力を続けた」ことだけを書くべきです。
限られた文字数の中で、”何をどのように表現するのか”ということには時間をかけてしっかりと練りましょう。
POINT②:読む相手のことを考えること。
こちらも事例1と同様です。ESを初めて読む企業の人にも伝わるような表現が望ましいです。この文章からでは、“なぜ?誰を?”見返したいのかが伝わりません。
「部に貢献するため」なのか、「試合相手を見返したい」のか。丁寧に書き上げるようにしましょう。
POINT③:エピソードは企業によって変えること。
自分をアピールするエピソードは、企業によって何がよいのか判断しましょう。「アメリカへの~」というエピソード自体は悪くないですが、提出先の企業が海外展開を行っていないのであれば、企業にとって魅力的に映らないかもしれません。
最後に
以上が自己PRの事例になります。制限された中で自分をアピールしなければいけないということは、想像以上に難しいことだと言えます。
得意不得意はあるので、なかなか上手に表現することができない人もいるでしょう。ですが、だからと言ってあきらめてはいけません。
文章というのは、書けば書くだけ上達していくものです。苦手に感じているのであればこそ、何度も何度も書き直しましょう。
そして自己PRを書き上げるためには、しっかりとした「自己分析」がなされていないといけません。CSParkCareerでは経験豊富なアドバイザーによる、1対1の面談を行っています。もちろん無料で!
なかなか「自己分析」が大変ということであれば、ぜひ一度面談しましょう!必ずあなたの力になります!!