はじめに
採用活動における最初の関門であるエントリーシート(以下、ES)。就職活動を始めるのであれば、進路が決まるまで幾度となく耳にも、口にもする言葉の一つです。
自己分析や業界分析、企業分析を経て、興味を持った企業の選考に合格していくには、まずはこのESを“しっかりと”書き、採用担当の興味を惹き、選考に通過しなければいけません。
ESを書く時のポイントについては、「入門編」として「PREP法」を紹介した記事を作っているので、そちらをまずはご確認ください。
この記事では、選考に落ちてしまった就活生のESを基に、よく聞かれる質問に対しての文章を、さらに細かいPOINTの視点で「どのように書けばよかったのか?」ということを説明していきたいと思います。
よくある質問「学生時代に頑張ったことを教えてください。」
必ずと言っていいほど質問される事項ではないでしょうか?ESで書かなくてもその後の面接等で質問される可能性は高いので、必ず文章化して考えておく必要があります。
この質問に対して、「企業側が何を期待しているのか」ということはそれぞれなので一概には言えないですが、「自分は、どのようなことに対して頑張ることができるのか?」ということを限られた文字数で最大限に伝えられるように書き上げましょう。
事例1:バスケットボール部の学生の場合(400字以内)
【添削前】
私が学生時代に頑張ったことは、体育会バスケットボール部での活動です。その中でも、分析した対戦相手の情報を、チーム全員の理解に繋がるように伝達をすることに力を入れました。昨年度、目標である創部史上初のインカレ出場という目標を果たすためには、格上の相手に勝つ必要がありました。※①そこで私はチームが行なっている戦術分析の結果を全員に伝達することで相手との実力差を縮めようと考えました。しかし、シーズン前半でなかなか結果に繋がりませんでした。そこで各選手が分析結果を自分事化できれば効果的な理解とアウトプットにつながると思ったため、伝達者目線ではなく、聞く側※③が求める情報や構成をヒアリングしました。それを元に修正を続けた結果、チーム全体に質の高い理解を促すことができ、最終的には同リーグ残留という結果を残すことができました。※②この経験から、受け手※③目線で伝達を行う事が深い理解に繋がることを学びました(394文字)
POINT①:「意見・主張」を述べたら必ず「理由・説明」を次に持ってくること!
日本語の文章(特に論文などの説明的文章)には、「意見・考え」の後には必ず「理由・説明」がくるという特徴があります。それはESでも同じです。
突き詰めていうと、日常会話でも同様です。「私は○○のように考える。なぜなら...」というように文章が続いていきます。
添削前の文章では、下線部①の部分で、「~力を入れた」という主張に対し、「~勝つ必要があった」は説明になっていません。これでは文章の流れも途切れてしまうので、「説明」を入れるように意識しましょう。
この部分を書き換えるとすると…
前)「その中でも、分析した対戦相手の情報を、チーム全員の理解に繋がるように伝達をすることに力を入れました。昨年度、目標である創部史上初のインカレ出場という目標を果たすためには、格上の相手に勝つ必要がありました。」
後)「その中でも分析した対戦相手の情報を、チーム全員の理解に繋がるように伝達をすることに力を入れました。それは、チームをサポートをすることが、試合に出ていない私にできることだと考えたからです。」
POINT②:前後の文脈はつなげること!
文字数が多くなってくると陥りがちなのですが、文章の前半と後半が繋がっていないことが多々あります。今回の文章では「インカレ出場」を目標としているのですから、後半でも「インカレ出場」がどうなったかを書くべきです。
いきなり「同リーグ残留」と言われても、どのリーグなのか?そもそも残留争いをするぐらいのチームだったのか?という疑問が出てきてしまい、まとまっていない文章に感じてしまいます。
POINT③:同じ意味を表す言葉はなるべく統一した表現に!
細かい部分ですが、同じ意味なのに違う単語を使って文章を書いてしまいがちです。違う単語を使うことによって、読む側としてはわかりづらい文章になります。
10,000文字を越えるような長文であれば敢えて表現を変えることで文章のリズムを作ることがありますが、400文字ほどの文章であれば同じ単語を使いましょう。
事例2:ラクロス部の学生の場合(400字以下)
【添削前】
私は学生時代、ラクロスでリーグ戦に出場し、一部昇格を目指すチームに貢献する為に最も力を注いだ。私はずっと二軍だったが、自分だけの武器を徹底的に磨き上げた結果、レギュラーになり、安定したプレイヤーとして一部昇格に貢献した。※①試合では全員が攻めすぎてしまうとミスが増え、ボールの保持率が下がり、相手に流れを持ってかれ※②やすい為、ボール保持時間をコントロールする役目の人が必要だ。日常生活から周りを把握して空気を読んで行動することか多い私はゲームコントロールが最適の役割だと思った。試合では、仲間が攻めて失敗した後のミスフォローや攻めきれない時にブレイカーになり、フィールド内の敵味方のポジショニングの把握と流れを読むという武器を身につけた。周りから私がいると攻めやすい、いい時に決めてくれると仲間から信頼を得て、常に状況判断を繰り返し確実に1試合1得点し、一部昇格に貢献した。(384文字)
POINT(全体):読む相手のことを考え、伝わる単語を選ぶこと。
文章を書く上でもっとも難しいのが「客観的な視点」を持つことです。このESはラクロス部の学生が書いたものですが、所々にラクロス経験者でないと伝わりにくい言葉を使っています(ボールの保持率、ブレイカー など)。
また、書いている本人だけは理解しているが、第三者が理解しにくい表現をしている箇所もあります(いい時に決めてくれる、空気を読んで行動する)。当たり前ですが、ESを読む企業の人はあなたのことを全く知りません。
ESを書く際には、「初めてあなたのESを読む」ということを念頭に置き、誰にでも伝わる表現をしましょう。今回のESで使用されている言葉を誰にでも伝わる表現にすると...
前)「日常生活から周りを把握して空気を読んで行動することか多い私は...」
後)「日常生活から周囲の様子を確認し、状況に合わせて行動することが多い私は...」
前)「周りから私がいると攻めやすい、いい時に決めてくれる」
後)「他の部員から私がいると攻めやすい、決めてほしい時に点を決めてくれる」
確かに、スポーツや部活を頑張ってきた体育会学生であれば伝わりやすい言葉はありますが、企業側の人事担当が体育会学生かどうかはわかりません。常に伝わりやすい表現になっているかどうかは意識するようにしましょう。
POINT①:「意見・主張」を述べたら必ず「理由・説明」を次に持ってくること。
事例1のバスケットボール部の学生と同様です。なぜ「チームに貢献すること」に最も力を注いだのか?ということを必ず直後に書くようにしましょう。
「一部リーグ昇格に貢献したかった」のはなぜか?「自分だけの武器を磨けあげた」のはなぜか?この部分にESを書く側の”人となり”が出てくるはずなので、むしろ「理由・説明」に特に力を入れましょう。
書き換えるとしたら、以下のようになります。
前)「~一部昇格を目指すチームに貢献する為に最も力を注いだ。私はずっと二軍だったが、自分だけの武器を徹底的に磨き上げた結果、レギュラーになり、安定したプレイヤーとして一部昇格に貢献した。試合では全員が攻めすぎてしまうと~」
後)「~一部昇格を目指すチームに貢献する為に最も力を注いだ。それは、所属するからにはそのチームに貢献したいと考えたからだ。そして、試合に出場して勝利へ導くことで貢献を使用を考えた。そのために…」
POINT②:「い」抜き言葉に気を付ける。
「ら」抜き言葉以外にも気を付けなければいけないひらがながあります。それは「い」です。普段の日常会話ではそこまで気にならないですし、気にしないかと思いますが、「持ってかれ」ではなく、「持っていかれ」が正しいでしょう。
事例3:バスケットボール部の学生の場合(200文字)
【添削前】
高校3年生でアジア大会の日本代表に選ばれ、優勝したいという夢がありました。※①優勝は難しいと言われていましたが、練習に練習を重ねた結果どのチームよりもチーム力でも練習量でも負けないと思える自信を持ち本番に臨みました。その結果優勝し、諦めずに努力すれば夢が叶うとわかりました。(135文字※②)
POINT①:質問に対する「答え」は最初に書く!
質問に対して、その「答え」を最初に書いていないESが散見されます。このES例も「頑張ったこと」を聞かれているのに、「~という夢がありました。」と質問の意図とは外れたことを答えてしまっているのがわかるでしょうか?
「頑張ったこと」は「日本代表での活動」で、その活動の中の「アジア大会優勝」が夢であったのだと思います。
書いている側としては答えているつもりでも、「つもり」で終わってしまっていないかの確認は必ずするようにしましょう。
書き換えるとしたら、以下のようになります。
前)「高校3年生でアジア大会の日本代表に選ばれ、優勝したいという夢がありました。優勝は~」
後)「高校3年生の時に選出された、日本代表での活動です。アジアNo.1を決める大会で優勝することを目標に掲げ~」
POINT②:指定文字数の8割以上は記入すること!
今回の場合、「200文字以下」と指定されているので、その8割である「160文字」は書くようにしましょう。もちろん、余計なことをダラダラと書いてはいけませんが、あまりに文字数が少ないと、「興味がない」と捉えられてしまうことがあるので要注意です。
最後に
いかがでしょうか?
自分をアピールする文章を書くということはとても難しいですよね?
得意不得意はあるので、なかなか上手に表現することができない人もいるでしょう。ですが、だからと言ってあきらめてはいけません。
文章というのは、書けば書くだけ上達していくものです。苦手に感じているのであればこそ、何度も何度も書き直しましょう。
そしてESを書き上げるためには、しっかりとした「自己分析」がなされていないといけません。CSParkCareerでは経験豊富なアドバイザーによる、1対1の面談を行っています。もちろん無料で!
なかなか「自己分析」が大変ということであれば、ぜひ一度面談しましょう!必ずあなたの力になります!!